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2007.07.24 (Tue)

お風呂場物語01

■キョーコ視点

More・・・


(まえおき)

はじめて舞台に挑戦することになり、役作りに悩んでいると、
敦賀さんがその舞台の原典を映画化した作品のDVDを見るかい、と誘ってくれた。
プレイヤーがないので、と言うと、敦賀さんのマンションで見せて下さるという。
恐縮して遠慮すると、夕飯を作ることと引き換えに、という交換条件を提示してもらい、
敦賀さんの食事事情については慢性的に心配な私はほぼ二つ返事でそれを引き受けた。

……これはそんな日の出来事です。

***

敦賀さんのマンションに向かう途中でふりだした雨は、
勢いを強めて車のフロントガラスに叩きつけた。
ほとんどワイパーも効かないような中、マンションの駐車場へ到着する。

敦賀さんは、車を止め、キーを操作して暗証番号を入力し、ゲートを開けた。
そして、ゆっくりと進入する途中…… 車体がガクンと揺れて止まった。

「ん……?なんだろう…」

敦賀さんが首を傾げる。
エンジンをふかすと、タイヤが空回りしているような音をたてた。
敦賀さんは私に、待ってて、と言うと、雨の中を出ていった。
暫時。

「……側溝の蓋がなくなってて、そこにタイヤが落ちたんだ、今管理人さんに連絡したから、
先に部屋にあがっててくれないか」

鍵を渡してくれようとする敦賀さんに異を唱え、その場にとどまり一緒に待った。
管理会社の人たちが到着し、車を持ち上げたり側溝に仮蓋を閉める作業をはじめる。
そのあいだ傘をさしながら見守っていただけなのに、強い雨は私を濡れ鼠にした。
ましてや、管理人さんたちと一緒に作業をはじめた敦賀さんは、
全てが終わると水から上がってきたばかりの人みたく、ずぶ濡れになっていた。
にもかかわらず、恐縮し頭を下げる管理会社の人たちに、鷹揚に手をふる彼を見ると、
あらためて大人だなあ…と思う。

お互い、管理会社の人に貰ったタオルで体を拭きながらようよう敦賀さんの部屋にたどり着いた。

「…ひどいめにあわせちゃったね…冷えたろう?このままシャワー浴びてくるといいよ」

玄関先で彼は言った。

「シャワーなら敦賀さんが使われて下さい、私はタオルをお借りできたら大丈夫です」

「俺はジムのほうのシャワールームを使うから」

…そうか、ここんちは普通の家じゃなかった。
雨に濡れた敦賀さんがにっこりと笑った。
水もしたたる…という比喩を、誰が最初に思い付いたのかわからないけれど、
その人はわりとノーベル文学賞ものの偉業をなしとげたのではないだろうか…なんて
どうでもいい事を考えている私をバスルームに押し込んで、
彼はおおざっぱな仕種で体をふきふき乾燥機の使い方を説明し、出ていった。

びしょ濡れになった服を脱いで、搾る。
言われた通りに乾燥機の中に入れて……脱衣所からバスルームへの扉をあける。
ここに入ったのは過去一度だけだけど、やっぱりなんとなく呆然としてしまうくらい
すごく広くて綺麗なバスルームだなあと思う。
飾り彫りの入った、磨りガラスごしのシャワールームに、サウナ。
対面には、外が一望できる大きなジャグジーまで完備されている。
メルヘン魂を刺激される傍ら、庶民の私には、こんな広くてお洒落なスペースを
一人で使う事に罪悪感を抱いてしまう。微妙にコソコソした気分で、熱いシャワーを浴びた。
なんとなく、胸のあたりがムズムズするのは何故だろう?
敦賀さんのお宅でシャワーをお借りするのは初めてじゃないのに。

…考えるとなんとなくこわい方向に話が転びそうなので、私はつとめてそれを意識する事をやめた。
敦賀さんがいつもここでシャワーを浴びていることとか、
敦賀さんの使っているボディーソープやシャンプーとかがそこにあって、
それらが彼の纏うかおりを彷彿とさせるとか。

(よくわからないけどここは何だか心臓によくない気がするから、早く出ちゃおう)

髪を流してシャワーを止めるべく手を伸ばしたとき………………

先程から遠くでかすかにゴロついていたカミナリが大きく閃光を放った。

大きなガラス窓のシェードごしにまともに稲妻を見てしまい、体が竦み上がった。
ガタガタと体が震え始める。
か、カミナリは………すごくすごく、苦手なんです…………。

大きな雷鳴に悲鳴をあげてうずくまると、電気がふっと消えた。

て、停電だ………。

真っ暗ななか、出しっぱなしにしているシャワーを止める事もできないくらい、
窓の外からピカピカ入ってくる光がこわい。
再びの大きな雷鳴に、私はまた耳を押さえて小さく悲鳴をあげた。

「………最上さん…?」

心配そうな、敦賀さんの声がバスルームの外からかけられた。
地獄に仏な気分になる私にまた雷鳴が。

「……つ、敦賀さああん…」

「……カミナリ、怖いの?」

はああい、と弱々しく返事をすると、彼は困ったように押し黙り……
とにかく着替えと懐中電灯をここにおくから、着替えて出ておいで、と言った。
腰がぬけて……動けません。

「………わかった、じゃあちょっと失礼していいかな」

躊躇うような、声。

「あんまり…見ないようにするから…」

カミナリへの恐怖が勝って羞恥心を忘れた私は、彼の戸惑いと彼らしい遠慮の仕方が
意味することを受け止めそびれた。
ひときわ大きな雷鳴に、泣き声で敦賀さんを呼ぶ。
彼は慌てたように磨りガラスのドアをあけた。

大きくひらいたバスタオルで包みこまれる。
安心感に涙が出そうだった。
私を小脇に抱えるようにした敦賀さんは、手を伸ばしてシャワーのコルクを捻ろうとし……。

閃光。またどこかに落ちた。
悲鳴をあげて敦賀さんに縋り付くと、いきなりのことに驚いたらしい敦賀さんが
私を支えかねてバランスを崩した。

「うわっ」

ツルリと滑る足元。
強い力で引き寄せられて…

気がつけば二人、バスルームの床に倒れこんでいた。
私は、敦賀さんの上に乗っかって、彼をクッションにしてしまった恰好だった。

「………っ……」

敦賀さんが痛そうに顔をしかめた。
折角着替えたらしい、上質そうなシャツも、体も、止めそびれたシャワーに濡れそぼってしまった。

(はわ――――――――――!!!!)

申し訳なさにがばりと体を起こす。

「すっ、すみません、敦賀さん、大丈夫ですか…」

泣きそうになって、オロオロと問いかけると、
敦賀さんは無表情でかたまった。

(…?)

彼の視線を追って目を落とす。…と、そこには…

貧相な胸が。

(ぎゃーーーーーーー!!)

ガカッと閃光が走り、地響きのような雷鳴…

(ひーーーーーーー!!!!)

思わずふたたび敦賀さんにしがみついた。

ぎゅうぎゅうと、力任せに抱き着く私に、あきれたように、敦賀さんはため息をついた。

「……………さすがに、これはちょっと……」

喉に絡んだような掠れた声。
顔をあげると、彼は私を下目使いで睨んでいた。
暗がりの中で、その目は妙になまめかしい。
その目は何処で見たことがある…と思って、夜の帝王だ!と思い至った。
い、いじめられる!!!

身構えると、敦賀さんはひとつぐっと目を閉じて 眉間を歪ませ、唇を噛み締めるようにした。

私はといえば、意味も知らず、彼の様子に見とれてみたり…。

敦賀さんはすっかりぐしょ濡れになってしまったバスタオルで私をくるむようにすると、
ぐい、と体を起こした。
その時にはじめて、敦賀さんの大きな手が自分のお尻を掴んでいることに気付いた。

(…………!!!)

思わず後ろを振り返ると――――――――――。

胸元に彼の吐息がかかった気がして――――――――――。

胸の先を、なにか温かいものが掠めていったような、一瞬の刺激に―――――――――――。

敦賀さんを振り仰ぐと、彼はもういつものポーカーフェイスを取り戻していた。

(……な、なに…いまの?)


「…さあ、立って」

敦賀さんは私にしっかりバスタオルの前を合わせるよう身振りで促し、立ち上がった。
なんとなく呆然とバスルームを出ると、彼は濡れてしまったシャツの袖をまくって、
サニタリーラックから新しいバスタオル類を出し私に渡してくれた。
丁寧に視線を逸らしたまま…出て行く。

一人になって、体を拭きながら、私はやや混乱していた。

なんだろう…さっきの…。

胸の先を………。

温かくて柔らかいものが…撫でるみたいに。

まさか…。

まさか、舐められた…なんてことあるはずがないよね…。

気のせい…よね。


その時、電気がいっせいに点いた。


(………!!!)


何気なく目をやった、鏡に映った、自分のうしろすがた、その、お尻に。

大きな手形がしっかりとついていて。

私は恥ずかしさとよくわからない気持ちに捕われて、叫びだしたい気持ちになった。


(END)

04:49  |  コねた集  |  Trackback(0)  |  Comment(0)

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