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2012.07.29 (Sun)

■ACT.190 本誌妄想

ち ょ っ と し た 出 来 心 で ……。

こっそりこそこそウpしてみます。
いつものごとく(トホホ)本誌沿いレイプなので、
読んでやろうと思われる剛のおかたも、十分お気をつけてくださいね。


↓モレ

More・・・

撮影が前倒しで終わってしまったので、私は重い足取りのままセツカに扮して敦賀さんの待つホテルへ向かった。
どうしたって、会わないでいるわけにはいかないのなら、早めに地獄を見てしまったほうがいいと思った。

あの日、ショータローと一緒にいるところを敦賀さんに見られて、全身の血が凍った。
幸いにも(?)私は車の中だったので、そのまま前を通過しただけだったけれど
彼の、彼らしくなく、大きく目を見開いた無表情は、あきらかにこちらを視認していた。
とするともしかしたら、現場で事情を説明したほうが、話は早かったかもしれない。

本当に、ショータローはろくなことをしない。
結局、あの時はわざわざやってきて、なにがしたかったのか、さっぱりわからないし。

……憤懣やるかたない心持でエレベータを降り、ふと顔をあげると、
廊下の向こうから、妙に場にそぐわない、派手な女性が歩いて来るのが目に入った。

(……?)

それは確かに、ここはホテルなのだから、我々の他に宿泊する人がいて当然なのだけれど……。
“カイン兄さん”とここに泊まるようになってから、少なくともこのフロアには、
一度もほかの宿泊者の姿を見かけることがなかったから、
よけいになぜとはない違和感を覚えたのかもしれない。

通りすがりざま、女性のつけたキツイ香水が鼻についた。

(……?)

心が、ざわめいた。
理由はわからない。

女性の背を、見送るともなく見送って、カードキーを差し込み、ドアをあけた。
緊張の一瞬……でもそこには、案に相違して敦賀さんの姿はなかった。

シャワールームから水音がする。たぶん、敦賀さんはそこにいるんだろう。

とりあえず、ほっと肩の力を抜きかけて……気持ちより先に、体がギクリとした。

(……この、香り……?)

さっき、すれ違った女性の香り?
まさか。

あの人は、敦賀さんの知り合いだったんだろうか?
そして、ほかならぬこの部屋を、訪ねてきていたのだろうか?

そんなはずはない、だって、ここにいるのは『敦賀さん』ではなくて『カイン・ヒール氏』のはずで。
彼の設定に、あんな女性とのつながりを匂わせるものなど、なにも……なにも、ないはず……で。

視線がさまよって、吸い寄せられるようにベットを見つめてしまう。

ベッドの上が乱れているのは、敦賀さんでなくカイン兄さんなら常のことではあった。
でも私は、直感的に『そうではない』……と感じた。
鉛をのみこんだような、何とも言えない重苦しさがのどの奥をしめつける。
漠然と不快で、胸がつぶれそうな……いやなかんじ。

(……それは、敦賀さんの戯れを余裕で受け止められる大人の女性なら、
どうにかすることも吝かではないということで……)

いつか、そんなふうにひとりごちたことさえ、思い出してしまう。

ふらふらと、敦賀さんのベッドに近づき、無意識にシーツに手を伸ばす。

ゆっくりもちあげると、ふっと周囲に、香りがたった。

(――――……っ)

敦賀さんが、ここで、あの女性と……?

(――――いや………!!)

自分で自分がわからなくなるほどの、衝撃。
なぜ?

あの女性の派手なようすが、敦賀さんにそぐわなかったから?

プライベートとの境界が曖昧だとはいえ、こんな場所で……だから?

でも、敦賀さんだって、考えてみれば、考えなくったって、一人の健康な成人男性で。

そうであれば、おつきあいする女性くらいいたって不思議じゃない。

そんなものわかりのいい思考で納得しようとしても、
感情は分離したまま、心臓がよじれてぎゅうぎゅうと痛む。
私は胸を押さえ、思わず涙目になった。

そう……敦賀さんが、誰とつきあおうと、私にはなんのかかわりもないことなんだ…と。
そんな当たり前のことが、ひどく私を傷つけた。

コントロールできない怒涛のような感情がわっと押し寄せて、苦しい。


「…………何をしているの?」


だから、私は、いつの間にか止まっていたシャワーの水音にも気づかずに、
濡れ髪のまま、上半身裸で首にタオルをかけた敦賀さんが、
壁際にもたれてこちらを見ていたことにも気づかずにいたのだった。


***


「……今日は、遅くなるんじゃなかったっけ……」

彼は独り言のように、口の中でつぶやいた。
彼から発散される、どこかけだるげな、いままで嗅いだことのないような
異性のにおいに、自分の中で何かが怖気づいている。

一緒にいたくない。

とうとつに、そんな衝動につきあげられた。

部屋の中が妙に狭くて、息苦しいのは、香水の残り香のせいばかりじゃない。

「……はい、そうなんですが……思いのほか、撮影が早く終わりまして、なので、あの、ちょっと」

不自然にならないように、笑えただろうか?
くちもとは、ひきつらないでいられただろうか?

下で、買い物を忘れたので、ちょっと行ってきます、とモゴモゴ言って、彼に背を向ける。
早く離れたかった。でないと、心臓が壊れてしまう気がした。
外に出たら出たできっともう、この部屋には戻ってこられない……でもそれでいい。

ドアノブに手をかけると、いつの間に近寄ってきたのか、後ろから敦賀さんに手首を掴まれた。
反射的に、振り仰ぐと、敦賀さんは目にぽっかりと黒い深淵を浮かべて、じっと私を見下ろした。

「……何を忘れたの……?」

それで私は、彼がつねの彼でない、ということにようやく気づいた。

「………敦……」

視線が絡み合って、彼の美貌から、目が離せない。
このひとは、ひどい。
心の奥にしまって、何重にもかけた鍵を、この視線だけで、容易くふきとばしてしまう……。

黒い穴みたいな無機質な目の奥に、ちらりと何かが蠢いた。
思わず覗き込もうとすると、彼は眉を寄せて、視線を外してしまった。

手首をつかんだ強い力はそのままに……。

「…………いや、そうだな……うん、行っておいで――――」

のどに絡むような、かすれた声で言って、彼は遠慮がちに背を向けた。
何かが苦しくてならない、といったその様子に、なんともいえない不安が湧いてくる。

「……敦賀さん……?」

「……こっちに来ないでくれ」

強い拒絶。
向けられた広い背中に、氷を呑んだみたいに棒立ちになってしまった。
いままで、どんなに……でも、決してこんなふうに、されたことはなかったのに、何故。

それで私は、ここに来るまで心を占めていた、ショータローとの一件を思い出した。
あれのせい?

うかうかと、仇敵に捕獲されて、車に同乗させられて、不本意とはいえ、食事も共にしてしまった。

敦賀さんは、そんな私にあきれて……遂に、愛想が尽きてしまった……とか?

ぐるぐると、自分で思っている以上に混乱しながら、私は無意識に敦賀さんの背を追った。

軽井沢の時に見たいつかの夢が、まざまざと蘇る。

(今後一切、仕事以外の場で話しかけるのは遠慮してくれないか……)

あの夢の中の敦賀さんが、眼前の敦賀さんにオーバーラップした。

驚いたのは、自分が泣きそうになったことだった。
あの時も、つらかった。暗澹たる気持ちになった。
でも、こんな、こんなふうに……心臓が攀じれて、引き千切れてしまいそうな痛みはなかった。

「…………あのっ………」

ひどい。
この人は本当にひどい。

無意識に両手を揉み絞りながら、決死の思いで声をかけると、
シャツを羽織りながら敦賀さんはちらりと横目で私を見た。

「あの、……あの…………」

思わずうつむき、口の中で、言葉が縺れる。
何をどういっていいのかわからない。
そもそも、敦賀さんの何がどう変なのかすら、わかっていなかった。

途切れた言葉のまま、すごく長い時間が経過したような気がした。

雄弁なため息が聞こえて、顔をあげると、彼は、今まで見たことがないような不思議な顔をして、
私を見つめていた。

な……なんだろう。

怒ってる、のとも違う、でも、いつもの敦賀さんじゃなくて。
はだけたシャツから覗く素肌がいやになまめかしくて、
私は、あらためて敦賀さんは『男性』なのだと認識してしまった。

「……なに?」

小首を傾げて、促される。
言葉に詰まって、何も言えない。
こんな事態は、正直私の手に余った。

「………あの……あの、先日の……あいつ……との、こと……なのです、が……」

切れ切れに言って、うつむいて、思い切って顔を上げると、
敦賀さんは無表情が嵩じて人形みたいな白い顔に
目だけ底光りするような物騒さをたたえて、私を見ていた。

ふと、なぜ私はいつも、あいつとのことについて、
なんだかんだとこの人に言い訳みたいなことを言うんだろう?と思った。
もちろんそこに、甘さや色恋的なものは一切絡んでいないけれども、
でもそれでも、そもそも、敦賀さんの様子がへんなことを、
そこに結びつけたりすることが相当僭越なことなんじゃないか……と思えて、
二の語が告げなくなった。

「……君が行かないなら、俺が出かけさせてもらうけど………」

敦賀さんは、低く呟くと、何かを振り払うように、前髪を片手で梳きあげた。
とりつくしまのない冷たいようすに反射的に取りすがってしまう。

「……っ」

「敦賀さん……っ」

腕に触れると、彼は目に見えてビクリと震えた。
でも私は、いつにない彼の冷たさに、パニックを起こしてしまっていた。
そもそも敦賀さんに意地悪されることなら耐性はついていた、
けれども、なんだかんだと“拒絶”だけはされたことがなかったのだ、と気づいてしまった。

こわい。

「………敦賀さん……」

どこかに行ってしまう、敦賀さんが、私をおいて、どこかに。
それで私は、今まで自分がどんなに彼に甘やかされていたのかに気づいて、
なんだか茫然としてしまった。


その時、強い力で二の腕を捕まれた。
え?と思う間もなく、ベッドに押し倒される。

重い体でおさえつけられ、身動きができないパニックに目の前が真っ白になる。
顎をとられて、くちづけされるに至って、私は何も考えられなくなった。

荒い息がそんな至近距離で。

噛みつくように、深くキスをされて、意味が分からなかった。

私はただ、硬直して、彼のなすがままになった。


「……いやだ、―――いやだ…………」


彼は、ひとしきりそうしたあと、唇を離して、口の中でつぶやいた。

「ダメなんだ……いやだ、したくない……やめてくれ………」

悲痛な囁きは、私にではなく、誰か別の存在に向けられているようだった。
眉根を寄せて、固く目をつぶる表情が、苦悶にみちて、こんな際だというのに不埒なほど美しかった。

目を開けても、私を見ていない。

この敦賀さんには覚えがあった。

ダークムーンの、カーチェイスの事故の時や、
BJに体を乗っ取られた……ようにふるまう時の……に、似ていた。

…………でも、少し、違うような気もした。

いったい、敦賀さんに何が起こっているのかわからない。
そんなとんでもない状況なのに、頭の芯が冷えている私がいた。


『人殺し……』


あの、“地雷”が、心に浮かび上がる。
胸が、痛んだ。


***


「…………どうして、抵抗しないの……?」


顔のすぐ近くに敦賀さんの美貌があった。
でも、その貌が、少し、いつもの彼とはちがっていた。
なにがなし、胸を衝かれるような感じがした。

「………」

指で、唇をなぞるしぐさの淫靡。

「………いったい……どう、なさった……ん、ですか……?」

静かに問うてみると、彼はうっそりと嗤った。

「…………悪あがきを……」

え?

「無駄な、悪あがきをしていたんだよ……」

低い声に、あらためて胸の奥が冷える気がした。

「……女を抱けば、気がまぎれるかと思えば、勃たないし」

え?

「………むしゃくしゃするから、買ったんだよ。気づいただろう?タイミング的に」

気づいたから、そんな俺が汚らわしくて、来たとたんに帰ろうと思ったんじゃないの?と彼は嘯いた。
冷たい手で、心臓を鷲掴みにされるかと思った。

「……なのに、君ときたら……」

雄弁にため息をついて、唇を噛む。彼は、下腹部を私に押し付けるようにした。

熱い……―――

「……いるだけで、俺を、こんなふうにするくせに………」

それが、どんな意味なのか一瞬わからずにいると、彼は体をずらして、
野卑なしぐさで重ねてそこを私に擦り付けてきた。

(………!!!)

「………わざわざ 『彼』 の名前なんか出して…………」

「……やっ、やめてください……敦賀さん……っ?」

「――――……もう遅い」


鎖を引き千切って、出てきてしまったんだ、と彼は薄く笑った。

「大体が、きれいなままでいようと思うのが間違いで、嘘なんだ」

首筋に顔を埋めてささやかれ、耳に敦賀さんの声がじかに響く。
息が触れて、くすぐったいようななにかが、背を駆け上がってきて、おかしな気分になる。
彼を押しやろうとあがくのに、のしかかった大きな体は少しも動かない。

私はそれで、自分がどれだけ異常な状態のなかにおかれているのか、
ということに、ようやく気づいたのだった。

「…………自分だけ、のうのうと、こんなところで大切な相手を、作るだなんて、ね……」

ぞろり、と耳を舐めあげられて、体が撥ねた。

すごく、大事なことを、敦賀さんはつぶやいている。
核心にせまるようなことを……だけど。

私の耳にくちづけながら、敦賀さんは強い手で胸元を掴むと、一気にそれを引き裂いた。
布が破れる音と、自分の悲鳴が混じって、緊迫した空気が部屋を満たす。

私は、呪縛がとけたかのようにようやく本能的に逃れようと足掻いた。
体を返して、あらわになった胸元を隠そうと泣きたい気持ちになる。
実際意識しないまま、涙が出ていた。

「……たまらないね……」

背中から、まとわる服を引きはがして、上半身を裸にされる、
元々セツカの衣装なので、露出がちなのが災いしていた。

「……いやっ、いや……!」

うつぶせて手を伸ばし、彼の腕の中から逃れようといざると、
彼はそれを狙っていたかのようにうしろから手をまわして、
器用にショートパンツを脱がせにかかってきた。

「やだ、やめて……やめてください、敦賀さん!」

彼の手に爪を立てて抗うのに、ぜんぜん通用しない。
乱暴にショーツごと引き下ろされて、敦賀さんのまえで
そんなとんでもない恰好になって、私は本気で泣いた。

背中に彼が覆いかぶさってくる。肩口に噛みつかれて、痛みにのけぞった。
ぎりぎりと、肉に歯が食い込む。そうしておいて、
敦賀さんは私の体を大きな両手で撫で回し、掴みまわした。
苦痛と、みだらな刺激。ふくれあがる動悸の向こうにかすかに笑う声が聞こえた。

「……いた……いたい、いたいです………敦賀さん……、や……」

噛み千切られるかと思った。

彼は唇を滑らせて、肩口からつうっと舌で背中をなぞった。
ぞくりとする意味の分からない衝撃に、喘ぎめいた声が勝手に滑り出ていく。

「いやあ!!!!!」

肩を押さえて、痛みに耐えていると、むき出しになったお尻に彼の手を感じ……
あろうことか、やんわりと拡げ、そこに彼が顔を埋めてきて、私はパニックに陥った。
濡れた舌で、そんなとんでもないところを、舐められる………恐慌。

なにをどうされているかとか、わからないけれども、
恐ろしいほどの嫌悪感と……どうしようもないほどの、
生理的な快感に挟まれて、私はめちゃめちゃに暴れた。

これはなに?

なぜ、こんなことになっているの?

どうして、敦賀さんは、こんな。


彼は、執拗に、偏執的といってもいいくらいに、そこを徹底して甚振った。
柔らかい、敦賀さんの唇と、舌に、蹂躙される。
刺激されると、そんなところがわななくことなんかだって知らなかったのに。
首を振って、逃れようとあがくと、結果的に腰を振ってしまって、
かえって思わない官能を弾かれたりした。

吸われて響く濡れた音に耳まで犯されるような気がした。

「………少し、気持ちよくなってきたね……?」

どのくらい、そうされていたのか、嫌悪を快感が凌駕しはじめたのを感じた時には、
すでに手遅れなくらいに、下半身を得体のしれない感覚が支配しはじめていた。

「………」

敦賀さんの指先が、いちばん強い快感を生むところを悪戯そうに掠めると、知らず、腰がはねてしまう。
息が苦しい。心臓の鼓動が、耳元でうるさいくらいに鳴っている。

いつの間にか、裏返しにされて、両足を左右に大きく開かされ、
誰にも晒したことのないような淫らな姿を、彼に支配されていた。

舌先が、そこを擽り、唇で吸われる。
そうして、悪戯な指でこすりたてられて、遂に私は喘いでしまった。

「………ふしだらだね……」

ぼろぼろと、大量の涙がこぼれた。
体と心が引き裂かれるような錯覚。
自分のからだがどうしようもなく自分の思う通りにならない。

でも何よりも悲しくて、胸がどうしようもなく痛くてたまらなかったのは、
敦賀さんとこんなふうになって、もう昨日までのふたりには、
決して戻れない……という現実にだった。

好き………。

私は本当に、この人を好きになっていたんだ……という、自覚。
見ないふりをして、鍵をかけなおしたふりをして、決して認めたりしなかったけれど、
ほんとうにとっくに手遅れだった。

(最上さん……)

でもそれが、どんなにか贅沢で、どんなにかしあわせで、
どんなにかありえない僥倖みたいなことだったのか、
こんなことになって、ようやく私は理解しはじめていた。

やさしい、敦賀さん。

大人で、紳士で、きれいで………

「……あいにくだね……」

棘のある声が、肉体と分離したとりとめのない思考を遮ってきた。
部屋の外からの光があたって不思議に緑色がかって見える昏い目が、私を覗き込んでくる。
口元に皮肉な笑みを浮かべたこの人は、いったい誰だっただろう……?

「これが、オレのほんとう、だよ……?」

心を読まれたような、冷たい氷の塊を呑みこんだような、寒さに、ぶるっと体がふるえる。

「……君の知っているアイツなんか、ぜんぜんオレじゃない……――――そんなのは」

(オレが演じていた、『敦賀 蓮』という、ほんとうはどこにもいないうすっぺらい役柄に過ぎないんだよ……)

ならなぜ、そんなに辛そうな顔をするんですか。
きれいな顔を、泣いてしまいそうにゆがめて。

「……やせ我慢して、わらっちゃうよね、大人らしく振舞ってさ、ほんとうはただの……ケダモノのくせに」

そうして、彼は、私のひざ裏をすくいあげて、押し広げると、
十分に濡れそぼったそこに、やけどしそうなくらいに熱い塊を押し付けてきた。

「………ケダモノは、ケダモノらしく……――――」

口の中で、つぶやくように言って………

彼は、私を犯した。


***


自分があげている悲鳴とは思われなかった。
なんとか苦痛から逃れ出ようと足掻くたびに、強い力で引き戻され、肉の楔が私をいっそう深く穿った。
私の悲鳴ごと絡め取り、のみこむように、敦賀さんが唇に噛みつき、吸い付く。
がっちりと押さえ込まれて、無茶苦茶に注送を繰り返す彼に、私はひたすら首を横に振った。

いたい、………痛い。

それはもう、痛いなんていうものじゃなくって、
灼熱の杭でからだをふたつに引き裂かれているような気がした。
なんども、なんども。くりかえし、くりかえし。

敦賀さんは、タガが外れてしまったかのように、一切の斟酌なく、その行為に没頭しているようだった。
荒い息が、私を掠めるたびに、本能的に怯えてしまう。こわい……いたい、こわい、痛い。

だれか助けて、と虚空に手を伸ばすと、それを取られてベッドに縫いつけられた。
浮いた腰に自らを打ちつけながら、だれも助けになんか来ないよ、と彼は嗤った。

君はここで、俺に壊されるんだよ?と、囁いた。

どうして……と問うと、彼はたくましい胸を淫らに喘がせながら、
首をかしげるようにして『愛してしまったからかな?』と嘯いた。


どうしようもなく、昏い闇がそこにあった。


***


意識を失っていたことに気づいたのは、逆説的だけれども、意識を取り戻してからだった。
体を少しでも動かすと、さんざんにされたそこに、激痛が走る。
涙でごわごわになって腫れぼったくなった瞼を透かして部屋の中を見回しても、彼の気配はなかった。

ホテルの備え付けのパジャマを着せられた私は、ゆっくりとベッドの上に起き上がった。
シーツは無残に穢れてしまい、そこでどんな凌辱が行われたかを如実にあらわしてはいたけれど、
ぬくもりすらも既になかった。

嫌な感じがする。

ふらふらしながらもベッドを降りて、痛みに顔をしかめながらドアに向かう。
どこに、とも思わず、足が勝手に屋上に向かっていた。
なんとなく、そんな気がした。

一応、こじんまりとではあったけれど、屋上庭園に設えられているあいだを通ると、
室外機を無機質なコンクリで覆ったむこうに、求める人の影があった。
風に吹かれて、一筋二筋なびく髪がなんだかひどく儚げで、胸が痛んだ。

広い背中すら、途方に暮れた小さなこどものように見える。

敦賀さん……と呼びかけると、弾かれたように振り返って……

絶望にひきゆがむ人の顔、というものを、私は初めて見た。

「…………そのままそこから飛び降りちゃいそうな顔ですね……?」

敢えて茶化した風にいったのに、かれはしごく真面目な顔で、目を伏せてしまう。

「……君がそれをしろというのなら、俺はそれでもいいよ……」

「…………そんなこと、しろなんて、いいません……」


でも、実は、こうして立っているのは辛い。
めまいがして、ふらつくと、敦賀さんはこちらに手を伸ばし……
次の瞬間、躊躇うようにその手をひっこめて棒立ちになった。

「………でも……そのかわりに、話してください」

だから私は、無理をしないように、思い切りよく、その場にしゃがみこんだ。

「…………何を?」

「全部です」

あなたの抱えているものを、全部。
あなたが、かくしていることを、全部。
ここのところ、ずっと抱いてきた不審を、全部。
『敦賀 蓮』は、演じているのだと言った、じゃあ、その、本体は誰なのか、とか。
なんのために、そんなことをしているのかとか。

愛してしまったとか、言われたような、気もするし。

そうしたら……

そうしたら――――


「あれだけ、ひどいことをされたのに?」

「ひどいことを、されたから……です」

「…………まだまだ、序の口かもしれないと……思わないの」

敦賀さんの目を、ちらりと淫蕩な何かがよぎって消えた。

怖気づかないわけじゃないけれど……でも。

(ごめんね……ごめんなさい、ごめん……――――)

朦朧とした意識の中で、私を抱いて、はらはらと泣くこの人が幻ではなかったのなら……
今、この手を離すことだけは、してはいけない……そんな気がするから。

「やさしいね、同情してくれるの?……でもそんなじゃ、悪い男に、付け込まれるよ…」

「同情なんかじゃありません、私は敦賀さんが好きなんです」

ふてくされたように言うと、彼はびっくりしたみたいに目を見開いた。

「だから、こんなことで……こんなことで、もう、敦賀さんと話せなくなったり
……そんなことはいやなんです。ぜったい」

どさくさに、そういって、うつむくと、ふと影が差した。
見上げると、敦賀さんが、すぐ前に立って、じっと私を見つめていた。

「……いま、なんて……?」

「…………知りません」

近くにすると、やっぱり少し、こわかった。
その怖気を、振り払うように、私はうつむいたまま、彼のほうに右手を伸ばした。

「ぜんぶ、教えてくださったら……もう一回、ちゃんと言います……」

(立てないんです……連れて行ってください、お部屋に……)

思い切って、いうと、躊躇いがちな大きな手が、
私の手を、そっと押し戴くようにつつみこんできた。
震えないように。怯えないように。

「……………」

彼は、低く、小さく、何かを囁いた。

道のりは、遠く……だけれども、きっと、なんとかなる……様な気がした。

二人なら、きっと。

敦賀さんの手のひらをぎゅっと握ると、彼がそっと握り返してくれる。

だから、きっと大丈夫。

……そんな気がした。




(了)


---------------------------
ンー、ちょっと不完全燃焼だですね?
22:58  |  本誌感想  |  Trackback(0)  |  Comment(21)

Comment

すごく切なくて好きこんばんは

こんばんは、すごく、なんだか
切なくて、いいなあ。
線と刀のような、味がしました(個人暖)
萌えました。
perorin |  2012.07.30(月) 00:32 | URL |  【編集】

ハァハァ

夢中で読んじゃいましたー!
( ゚∀゚)o彡゚ ダーククオン!ダーククオン!
しかしキョコたんの「はじめて」がふんわりハッピーでないのでチリチリしますー
なのでラブラブな続きをキボン!
愛犬う○ち |  2012.07.30(月) 00:42 | URL |  【編集】

はうっ…

もう、ぎゅう~~~と胸が掴まれる感じで切ない~!でもそれが良い!
良いものを読ませて頂きありがとうございます^^
キョコちゃんはイイ女だなあ~。
あと「勃たないし」発言の敦賀さんに萌えました!
敦賀さんでも久遠でも、他の女じゃ勃たないのですね(納得!)
sunny |  2012.07.30(月) 01:06 | URL |  【編集】

真夜中に

目が冴えてランランとしています~(・∀・)ヤッテクレル!!
あー!!もう!!もう!!←牛じゃないぉ!!
雰囲気もヤルことも超ェロスが素敵です!!素敵すぐる!!キョコタンの包容力サイコー!!
本誌もこんな風にくっ付いちゃってイイよw
ヒョー㌦ |  2012.07.30(月) 03:40 | URL |  【編集】

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 |  2012.07.30(月) 03:59 |  |  【編集】

ネバーギブアップ!!

……実は、今日から一週間、本来であれば豚子は夏休み。
バッチリオール出勤となったのは

決 し て 仕 事 中 に あ そ(以下略)


そういうわけではありません!
そういうわけじゃないんだからね!(← )


■うるわしのペロりんちゃん
お越しくださってありがとうございます、
豚は木に登っているよ!!!

“ 菊 と 刀 ”と空目して、ええ!?と思ったことは、二人だけの秘密です。


■うんちっち
土曜日はあなたと某<ピグ>所でデートして、
集会に出たと思ったらこんばんプツで寝落ちして、(← )
誰もいなくなった宴のあとで目が覚めて、
さみしさのあまりこんなものをかきあげてみたのはここだけの秘密です。


■さにたん!
…………勃たない敦賀君がおねえさんに一体どのようなこのような

うえっふげふ、うえっふげふ!ごほ! な、なんでもありません!


■真夜中の天使
youはオリンピックがはじまってから、
(ん?でも考えてみたら、はじまるまえから?)夜更かししすぎですよ!!!
さすがの豚子も昨日は糸が切れたタコ(海にいるほう)のように
こときれていました。

睡眠ブラボー!


■隠密の柑橘系ちゃん(自重!自重!)
野獣的久遠君がちゃんと敦賀君になれたら、法被エンドなんだけども(←なんという第一変換)
そこまで書ききれなかったところが豚子のダメなところです。
たぶんすごく好きだと思うので、もうちょっと久遠君をちゃんと書いてみたいけど、
ここまできても彼像はまんだぼやっとしてるかなあ……。

は や く 本 誌 が 読 み た い!

buta |  2012.07.30(月) 06:16 | URL |  【編集】

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 |  2012.07.30(月) 07:49 |  |  【編集】

貴重な

夏休みがぁぁぁぁぁ!!ヽ(´Д`;)ノアゥア…

ガンガレー つД`) っ【メロン】
ヒョー㌦ |  2012.07.30(月) 09:43 | URL |  【編集】

ウ ェ ノレ 千 はぶどう。

どうしてかな!?すごくせっぱつまの助のはずなのに、豚はココに来ているよ!

■隠密のピノ(アイス式)たん
OH!元気がお出ましにならしゃったとデスか!そいつはウレシイ、冥利に尽きます!
おいでてくださってありがとね、日々お忙しいのではありませんか。
暑いので体にはお気をつけになってくださいよ~


■真夜中の最強の漢
夏休みはええねん。
コブタと二人きりで、一週間あの攻撃を食らいつづけることを考えたら、
お仕事場は天国やねん。(クーラー利きすぎてるけど)(← )

問題はな、

も の す ご く 切 羽 詰 っ て る は ず な の に、
何 故 コ コ に い る 自 分?(正しい現実逃避のあるべき姿)

……なんだわよ!!!

シタタタタタタタタt(←そしてやみくもに駆け出す)(←抜本的解決になっていない)


PS
あっ(LOVE)メロン(LOVE)
名もなき豚 |  2012.07.30(月) 10:23 | URL |  【編集】

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 |  2012.07.30(月) 16:05 |  |  【編集】

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 |  2012.07.30(月) 20:37 |  |  【編集】

うぉううぉううぉ~♪♪

なんか帰ってきたら印刷所から不在連絡票が入ってたお。
もしか刷り上がってきたのかもしれもはん。
だとしたら、明日には受け取れそうです。

ち ゃ ん と で き て る だ ろ う か ……?(←聞くな)


■隠密のサムゲたん(はあと)
校舎の影からホホをあからめ、いたいけに(?)見守ってくださっているあなたを、
あえての土俵!あえての土俵にうっちゃりをかましたい豚子は暗黒相撲力士です!(← )

さあ!はやく、本誌地獄にはまっておいでなさい!

い ま す ぐ に!!!

おかあさんは許しませんよ!!!(← )

………お体は、おいといくださいね。
健康第一!家内安全!願望成就! なのです。


■隠密のピコピコさん
はじめまして、ようこそいらしてくださいましたね、
豚に会ってくださってとてもうれしいです。
こんな傍若無人なところですが、よろしければ
ゆっくりしていってくださると豚は木に登ります。

つ[マワシ](なんでさっきから相撲押し!?)

こんな、読んでくださる方を超選ぶ話で大変恐縮ですが、
18禁であることと、レイプ(無理やり系)につき閲覧注意の表記を頂戴できれば、
楽しげな宴のスミのにぎやかしにしていただけたらうれしいデす。
お手数をおかけして申し訳ありません。

アメブ口さんはなんだか賑やかそうでうらやましいのですが、
なにせオイラは18禁モノ。コメントひとつ落とすにも

禁止文字が含まれています
禁止文字が含まれています
禁止文字が含まれています

……のブロックに泣かされ、ままなりません。

そのようなわけで、物陰から視線を感じた時には、たぶん豚が覗いていると思います。


超 逃 げ て!!


buta |  2012.07.30(月) 23:04 | URL |  【編集】

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 |  2012.07.30(月) 23:53 |  |  【編集】

OH! yes!

■隠密のピコピコハンマーさん(← )
丁寧なお心遣いありがとうございます。
早速参上しちゃったりなんだったりいたしました!

しかし……ヒョー㌦と、ですか……
そうですか。

そ れ な ら 何 の 心 配 も な い!!!

ありがとう、ありがとうございます!(← )
buta |  2012.07.31(火) 11:59 | URL |  【編集】

oh

お久しぶりぶりなSSですわぁ

続きが気になるお話有難う!!

続きは書かないの?!

読んでみたい気はするけど・・・・。

ところで、豚ちゃんの個人誌通販早くも待機して待ちきれないとです。

それこそぉ~~
カイン丸のごとく(クーンクーンクーン)

***

上のコメントみておっ普段ピグにいるんですかい?と思っちゃいました。

会ってみたいけどなかなか会えないですわねぇ~!!!

でも今度会ったらヨロピコォ

peach tea no1 |  2012.07.31(火) 14:55 | URL |  【編集】

夜!!!

おぉ、モモちゃん!おひさしぶりぶりざえもんです。
お元気そうでなによりなんでございますよ!

ピグはね……老体にムチ打って(←老体ってゆうな!)
ちょっとがんばったんだけんども……


操 作 で き な い !!!! ブワッ

buta |  2012.07.31(火) 23:38 | URL |  【編集】

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 |  2012.08.01(水) 04:20 |  |  【編集】

今日は激混んでるわあ

夏休みだというのに、皆働き者すぎます!!!

■餡蜜(隠密)くん

バッチコォーイ!
バッチコォーイ!


豚子でございま~す |  2012.08.01(水) 08:18 | URL |  【編集】

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 |  2012.08.02(木) 00:09 |  |  【編集】

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 |  2012.08.02(木) 02:30 |  |  【編集】

某所の祭りにすっかり乗り遅れたら…

何をしているんだろう、夜が明けたよ。
〒 イ ス テ ィ~。


■隠密のピコピコする人
おはようございます、レス 扶養 不要、というのは
大概この豚ログでは通用しないことになっています。
このたびは、素敵なご企画で過分なご紹介にあずかりまして、本当にありがとうございました。
何気にご紹介いただいた日のカウンタを見て(←w)アメブ口さんの威力に感じ入る次第です。

恩をあだで返す蓮視点を、あなたに捧げます……(← )

これからも、ご活躍をいつもこっそり盗み見ています!


超 逃 げ て!



■隠密の花水木ちゃん

見 ち ゃ ダ メ よ ぉ ~!!!!(ハラハラ)
buta |  2012.08.03(金) 06:01 | URL |  【編集】

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